イークラウドにメールインタビュー。大和証券グループとの連携について
イークラウドは、ベンチャーキャピタル(VC)での投資経験者や、急成長してきたベンチャー企業で活躍してきたメンバーで構成されている事業者です。

株式投資型クラウドファンディング(ECF)のプラットフォームサービスとしては後発になりますが、イークラウドさんの強みや大和証券グループとの連携、今後について投資家目線で聞いてみました。
質問者:カブスル

2004年から株式投資をはじめた中堅投資家で、EXITのひとつであるIPOにも詳しいです。
2021年から株式投資型クラウドファンディングへの投資も開始。
投資前はクラウドファンディングに否定的でしたが、いまや応援する立場に。
※返答内容の「太字・色字」はカブスルが装飾しています。

ご返答者:
イークラウド株式会社
代表取締役 波多江 直彦様
- 慶應義塾大学法学部卒業後、サイバーエージェントに入社。
- 広告代理部門、スマホメディア、オークション事業立ち上げ、子会社役員等を経て、サイバーエージェント・ベンチャーズで投資事業に従事。
- その後XTech Venturesにてパートナーとして、VR・SaaS・モビリティ・HRTech・シェアリングエコノミー・サブスクリプションサービス等への投資実行を担当。
- 2018年7月にイークラウド株式会社を創業、代表取締役に就任。
2022年1月に実施させて頂いたインタビュー記事です。ご返答の内容は当時のもの。
(2022年5月にM&Aが1件成立したので、追加アンケートを実施)
目次
【追加質問】M&A成立について
2022年5月、イークラウドで募集していた事業者のM&Aが成立し、投資から約9ヶ月で2.7倍のリターンに!
こちらのM&A成立について追加で質問を行わせて頂きました。

案件を10件ほどしか出していない状況で早くも1件のEXITは素晴らしいと思いますが、 案件組成する際に、会社のどういう部分を重点的に審査していますか?(他社との違い)

波多江様
これまでの株式投資型CFは創業初期の企業が多く、情報も少なく不確実なことが多いです。
そのため、通常のデューデリジェンス以外では、経営者自身が事業をやりきれる人物か、これから加わる株主と関係性を築くことができそうかなど、経営メンバーを良く見るようにしています。
- カブスル補足 -
デューデリジェンスとは、買い手(買収)側が、売り手(譲渡企業)側の実態を調査することです。
財務内容や事業内容を調査し、買収価格の評価に。

M&Aが成立の報道はPR TIMESで確認しました。
その後、御社Webサイトをみても相手先の社名がでていませんでしたが、こちらは出資している投資家以外には出せないものなのでしょうか?
今回は相手方のIR資料にでていたので買い手先を確認できましたが。

波多江様
今回の場合は、投資をしていた株主様にのみお伝えしていると聞いています。案件によって対応は異なると思います。

マイルストーンの数値の決め方について、どのように決定していますか?
またその進捗は双方で確認しますか?
※マイルストーンとはEXITまでの道筋のこと。プロジェクトの進捗度合いを確認する重要なポイント。

波多江様
ベンチャー企業の経営者が作成したものをベースに、根拠やロジックなどを踏まえて調整を繰り返し決定しています。
企業側によっては、調達後も定例会議というかたちで進捗確認などを行っております。

イークラウド独自のセカンダリーマーケット開設の可能性はありますか?

波多江様
現時点で明確な予定はございません。

今後どのくらいのペースで案件を募集できそうですか?

波多江様
引き続き、案件を厳選しながら、コンスタントに毎月複数の案件をご紹介できる状態を目指していきたいと考えております。

今回のM&A成立に関して、連携先の大和証券グループとの連携の影響はありますか?

波多江様
今回の件では特に連携はありませんでしたが、大和証券グループとは引き続き連携しながら事業の拡大を目指して参りたいと考えております。
イークラウドについて

株式投資型クラウドファンディングをサービス展開している企業はいくつかありますが、イークラウドさんの特徴と強みを教えて下さい。
サービスリリースが2020年6月と、同業者の中では後発になるかと思います。

波多江様
イークラウドは株式投資型クラウドファンディングに最後発で参入した会社です。その中で選ばれる存在になるために、個人投資家の方々へ「プロが厳選したベンチャー企業」を紹介することが大事だと考えております。
特にビジネスデューデリジェンスのフェーズでは、案件ごとに市場調査や現場ヒアリング調査などで一次情報を泥臭く収集して、事業計画やビジネスモデルの妥当性を会計面や法務面以外からも深堀りしていきます。
また、ベンチャー企業の資本政策の実現可能性がありそうか、考えうるイグジットイベントで投資家にリスクに見合った利益をもたらす可能性がありそうか、投資家・起業家両方の目線で、元ベンチャーキャピタリストが中心となって議論しながら資本政策をチェックするようにしています。
最後発ながら、これまでの案件全てが成立しており、平均調達金額でも全事業者の中で最も高い数字が出せている点※でも、個人投資家の皆さまから一定ご信頼やご評価をいただけているのではないかと思っております。
(※2021年12月時点)

御社のサービスの特徴のひとつとして、「大和証券グループと連携して事業運営」されていますが、大和証券グループと連携しているメリットは何でしょうか? 出資を受けていること以外でなにかありますでしょうか?

波多江様
我々が創業する少し前に、暗号資産で大きな社会現象と事件がありました。今後、株式投資型クラウドファンディングを健全な形で個人投資家の皆さまに普及させていくためには、大和証券グループが金融機関として培ってきたノウハウの上にサービスを構築するべきだと考え、資本業務提携をするに至りました。
また、これまで株式投資型クラウドファンディングで取り上げられる問題の一つに、株主属性の問題(株主に好ましく無い方が混在することで、その後の資本政策やIPOの弊害になる問題)がありました。上場企業が提供している属性に関するデータベースでの確認に加え、大和証券グループの専用データベースを活用しチェックを行うことで、そういったリスクを徹底的に下げています。
その他、大和証券グループとは、案件面・投資家送客なども含め幅広く連携も行っています。

代表取締役の波多江氏はサイバーエージェント・ベンチャーズで投資事業に従事されるなど、VCでの投資経験が豊富だと思われ、個人的には御社の取り扱いプロジェクトに興味を持っておりますが、やはりEXITを意識した事業者の選定などされているのでしょうか?

波多江様
はい。私自身も元VCとして長年を活動してきましたが、イークラウドにはその他にもVCで経験を積んできたメンバーや金融機関出身者・起業経験者が在籍しています。
こういったメンバーの経験と知を集結させながら、ベンチャー企業の発掘やサービスとしてのスキーム構築を行っています。

御社の従業員は何名でしょうか?

波多江様
約15名です。今年新たにイークラウドとして資金調達を行い、更なる体制強化を行っていく予定です。

御社のユーザー層(投資家)について教えて下さい。

波多江様
30~50代の男性を中心に投資経験が豊富な方が多く、その中でも、高所得者やエグゼクティブ層が多いのが特徴です。
- カブスルのひとこと -
メールインタビューで知った事実はこちら。
これまでの案件全てが成立しており、平均調達金額でも全事業者の中で最も高い数字が出せている。(2021年12月時点)
イークラウドさんは取り扱い件数はまだ少ないんですが、過去の案件を振り返ってみると、金額が集まりづらいバイオ系でも成立しております。また、平均調達金額が高いということで魅力的なプロジェクトを取り扱っているんじゃないでしょうか。
「一次情報を泥臭く収集」しているとのことでしたが、それらも投資家に信頼・評価されているのかもしれません。
案件の成約率が高いのは、登録する事業者に選ばれる材料ともなりますね。
株式投資型クラウドファンディングについて

株式投資型クラウドファンディングを利用する投資家のメリットには、どのようなものがあるでしょうか?

波多江様
個人投資家からみると、いくつかの点において大きな魅力を感じてもらっています。3点ご紹介できればと思います。
①まず「先着順」。
IPOの抽選応募だとなかなか当たらないところを、株式型クラウドファンディング先着順ですので、興味を持った銘柄は、応募開始時間に応募するとかなりの確率で株主になることができます。
②次に「10x」。
上場株でテンバガーと言われるような10倍以上になる銘柄も稀にありますが、非上場株への投資した会社がIPOやM&Aまで至ることがあれば数十倍のリターンも実現できる可能性もあります。ただし、事業がうまくいかない場合には企業価値がゼロになるリスクもあります。
③最後に「距離感」。
ベンチャー企業の初期の応援団として、距離感近く会社を応援することができます。

株式投資型クラウドファンディングのデメリットとして聞く話に、「名簿に乗る投資家が多くなる」という話を聞きます。
これには反社やワケのわからない投資家がいることでEXITの障壁になるという意味合いで目にしましたが、実際どうなのでしょうか?

波多江様
確かに株主の数は増えますが、国内では第一生命が150万人で上場したという事例もあります。
株主に好ましくない属性の方が入り込んでしまう点については、前述の通りスクリーニングを徹底することでリスクを限定的にしております。
また、株主が多いことで株主総会等の事務コストが増えるということも言われますが、イークラウドでは調達した企業にはオンラインで株主総会の招集や議決権行使を受け付けるツールを無料で提供することで、そういった問題が発生しないようにしています。
プロジェクトについて

イークラウドさんが取り扱っているプロジェクトの「EXIT件数」「解散・倒産件数」「存続件数」、それぞれ開示できるようでしたら教えて下さい。

波多江様
まだ募集から1年経ってない案件が大半ということで、現時点ではEXITや解散、倒産は発生しておりません。 また、全ての企業が存続しております。
1年間で売上が数倍になっている会社なども複数発生してきており、更なる成長に当社としても期待をしています。

サービス開始が新しいこともあり、取り扱い件数の伸びは今後に期待させていただきたいのですが、注目している分野などありますでしょうか?

波多江様
個人投資家が応援したくなり、応援することで成長する領域や、個人投資家からの応援を受けることで実現が加速する夢のある技術領域などを積極的にご紹介して行きたいと考えています。
個人投資家の皆さまの応援によって、中長期で成長を目指せるベンチャー企業を中心に今後もご紹介して行きたいと思っています。

事業者や現在の事業内容のチェックなどはされていると思いますが、成長戦略(マイルストーン)にはチェックがはいっているのでしょうか?
もちろん、目標であり将来予想が難しいのは理解しておりますが、御社・他社問わず、キレイな成長戦略なのでいつも気になっております。

波多江様
当社では成長戦略実現のための継続的な支援を行っているのも特徴かもしれません。
成長戦略(マイルストーン)を第三者(例えば会計士や財務アドバイザー)が資金調達用に作成し、その成長戦略を掲載している場合もあると聞いています。
もちろん、第三者のサポートを受けることを否定するものではありませんが、当社では、経営者が事業計画の作成、実行にどれぐらい本気で取り組み、個人投資家の皆さまの期待に応えようとしているかという部分を重視しております。
もちろん、経営者が直接作成した事業計画の実現についても不確実性もありますので、そのリスクについては開示資料も合わせてご確認ください。

御社ではまだ不成立がありませんが、不成立となった事業者へのフォローはどのようになっていますでしょうか? また、再開する可能性もあるのでしょうか?(最低金額を落としてなど)

波多江様
不成立になる可能性については、事業者の方にはご理解いただいていることを大前提としており、その後については事業者の方と協議の上で再開などについても個別に相談を行います。
目標募集額については、シナリオを実現するために必要な額として計画を精査しておりますので、目標額を単純に下げる形で募集することは当社では想定しておりません。

まだ募集に至っていない案件は、常時どれくらい抱えているのでしょうか?

波多江様
個人投資家の皆さまに、イークラウドらしい案件を月に数社はご紹介していけるよう、体制を強化して参ります。
- カブスルのひとこと -
成長戦略については、興味ぶかいお話を聞けたかなぁと思います。
何か機会があればもっと深く知りたいですが(笑)
イークラウドさんの場合、単純にプロジェクト数が少ないのだけが気になる点ですね。
また、月に行われるプロジェクト数が少ないので、同社に登録している投資家さんがワーッと集まって目標金額をすぐに達成しているのかもしれません。
セカンダリーマーケットについて

株式投資型クラウドファンディングの大きなデメリットのひとつである「流動性」。
売りたい時に売れないというリスクを改善するため、他社で未公開株を売買できるセカンダリーマーケットがまもなく誕生する予定です。
御社では流動性リスクを改善するため、なにか対策を検討されていますでしょうか?

波多江様
現時点では、事業計画の実現を支援し、M&AやIPOの事例を創出してEXIT機会を提供することを最重視しています。
個人投資家の皆さまにとっての流動化ニーズは理解できておりますが、事業者側からみた場合の流動化ニーズは現時点では高く無いと感じており、慎重に検討を行っております。

株式投資型クラウドファンディングは応援の意味合いが強いクラウドファンディングだと思います。
セカンダリーマーケットで未公開株が売買されると、参入してくる投資家が増える一方で、未公開株の価格が荒れるんじゃないか?と心配しておりますが、どのように考えておられるでしょうか?

波多江様
情報の非対称性が大きく、論点が非常に多いと感じており、当社としては慎重に検討を行っております。
- カブスルのひとこと -
サービスを開始されたばかりのイークラウドさんに、セカンダリーマーケットのことをお聞きするのは酷だとは思いましたが、投資家が気になる部分だと思うので、敢えて聞いてみました。
その他の質問

岸田政権が先日誕生しましたが、自民党総裁選の最中、TV番組で次の成長戦略に「スタートアップ」とフリップに書かれておられました。(分野などは言及せず)
これについて、なにか思うことはありますでしょうか?

波多江様
株式投資型クラウドファンディングの事業者として、国民(個人投資家)の皆さまがスタートアップに投資する機会を提供することで、経済循環を加速する役割を少しでも担っていければと思います。
カブクモをご覧のみなさんへ一言

株式投資型クラウドファンディングに興味を持っている方に一言お願いします。

波多江様
個人投資家の皆さまが少しずつ応援することで、成長が加速するベンチャー企業があります。
ぜひ、投資してみたいと思えるベンチャー企業の経営者やビジネスモデルに出会い、中長期で応援していただけると幸いです。

株式投資型クラウドファンディングに対して否定的な考えを持っている方に一言お願いします。

波多江様
「好き」、「嫌い」、「無関心」でいうと、無関心が一番つらいと聞いたことがあります。
まだまだ至らぬ点もあり、嫌いな部分は改善して参ります。そういった努力をしているところを少しでも好きになっていただけると嬉しいです。

このインタビューをご覧いただいている初心者の方へ、最後にひとことがあればお願いします。

波多江様
株式投資型クラウドファンディングは、個人投資家の皆さまの関心が増せば増すほど強くなる仕組みです。
ぜひ、個人投資家の皆さまと一緒に、ベンチャー投資の民主化を進め、発展させていけると嬉しいです!今後ともよろしくお願いします。
- カブスルのひとこと -
すべての質問に対し、真摯にご対応いただけました。
なんだか応援したくなる事業者さんですね。
是非、いまの水準を保ったまま取り扱い件数を増やしていただきたいと思います。
カブスルは投資家登録は完了しておりますので、今後 機会があれば投資してみたいと思います!
この度はお忙しい中、インタビューにご返答頂きありがとうございました。