株式投資型クラウドファンディングのEXIT実績

株式投資型クラウドファンディング(ECF)のEXIT実績をまとめました。

ECFは、未上場企業に早い段階で出資できる一方、投資資金を回収できるまでに時間がかかり、解散・倒産により損失となることもあります。

一方で、上場・M&A・事業会社による買付などにより、投資家がリターンを得た事例も出ています。

  • IPO(新規株式上場)・・・
  • M&A(事業売却・買収)・・・
  • 事業会社やファンドによる買付・・・
  • セカンダリーマーケットでの売却・・・

リターンの大きさだけで見ればIPOが目立ちますが、ECFではTOKYO PRO Marketへの上場、M&A、事業会社による一部買付など、複数のEXITパターンがあります。

公開されている主なEXIT実績

FUNDINNOが公表している投資回収事例では、事業会社による買付、TOKYO PRO Marketへの上場、M&Aなど、複数の回収パターンが掲載されています。

企業名 投資回収方法 リターン 補足
ハーバルアイ
旧:漢方生薬研究所
事業会社による一部買付 1.5倍 FUNDINNO初期の代表的なEXIT事例
nommoc 事業会社による一部買付 1.5倍 無料タクシー構想で注目された案件
社名非公開 ファンドからの買付 1.2倍 非公開の投資回収事例
社名非公開 ファンドからの買付 1.3倍 非公開の投資回収事例
社名非公開 自社による買取 1.57倍 非公開の投資回収事例
社名非公開 自社による買取 1.07倍 非公開の投資回収事例
琉球アスティーダ
スポーツクラブ
TOKYO PRO Marketへ上場 1.4倍 株式投資型クラウドファンディング初のIPO事例
Innovation Farm M&A 1.1倍~4.4倍 332名の投資家がリターンを得た事例
NPT TOKYO PRO Marketへ上場 1.2倍 FUNDINNO、CF Angelsの両方で資金調達実績あり
Trim M&A 2.15倍 子育て支援サービスを展開

※FUNDINNO公表の「投資回収事例」を基に作成。リターンは投資時期や条件により異なる場合があります。

ECFのEXITは、上場株のように市場でいつでも売却できるものではありません。投資回収事例が増えている一方で、未回収のまま長期保有となる案件や、解散・倒産により損失となる案件もあります。

IPO、TOKYO PRO MarketのEXIT事例

株式投資型クラウドファンディングはIPO(上場)でEXITが一番リターンの期待値が高い

IPOやTOKYO PRO Marketへの上場は、ECF投資家にとって分かりやすいEXIT事例です。

ただし、TOKYO PRO Marketはプロ投資家向け市場です。一般の個人投資家が自由に売買できる通常の東証グロース市場などとは性質が異なります。


事業者 主な上場関連事例
FUNDINNO 琉球アスティーダ、NPTなどのTOKYO PRO Market上場事例あり。
運営会社のFUNDINNO(462A)も東証グロースへ上場
CF Angels NPTがTOKYO PRO Marketへ上場

【IPO】FUNDINNO(462A)が東証グロースへ上場

株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」を運営するFUNDINNO(462A)は、2025年12月5日に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。

FUNDINNO(462A)はECFの投資先企業ではありませんが、未上場株式市場をつくってきたプラットフォーム運営会社自身の上場という意味で、ECF業界にとって大きな出来事です。

【IPO】NPT(医薬品)

NPTは、ゲノム情報に基づく個別化医療に対応する新規薬剤・治療法の臨床開発を行う企業です。

  • FUNDINNOで資金調達後、約2年でTOKYO PRO Marketへ上場承認
  • CF Angelsでも2024年8月~9月に募集を実施。資金調達額は2,440万円
  • 2025年1月30日にTOKYO PRO Marketへ上場
  • FUNDINNO公表の投資回収事例ではリターン1.2倍

CF Angelsにとっても初のIPO事例となりました。

2026年4月、NPTはTOKYO PRO Marketにおける上場廃止申請を臨時株主総会に付議することを決議しています。理由として、TOKYO PRO Market上場を維持するよりも、非上場化の方が機動的な資金調達につながる可能性が高いと説明しています。

この事例は、TOKYO PRO Market上場が必ずしも最終ゴールではなく、企業の成長段階や資金調達方針により、上場維持・非上場化・一般市場への上場準備など、選択肢が変わることを示しています。

【IPO】琉球アスティーダスポーツクラブ

琉球アスティーダスポーツクラブは、プロ卓球リーグ「Tリーグ」に所属するクラブチームを運営する企業です。

  • FUNDINNO案件
  • 2019年に募集。出資した投資家は151人
  • 2021年3月30日にTOKYO PRO Marketへ上場
  • FUNDINNO公表の投資回収事例ではリターン1.4倍

株式投資型クラウドファンディングで資金調達した企業として、初のIPO事例となりました。

グリーンシート経由では上場事例も

株式投資型クラウドファンディングの前身にあたる制度として、かつて「グリーンシート」がありました。

グリーンシートは2018年3月末で廃止されていますが、未上場株式から上場へ進む事例を考えるうえで参考になります。

ECFは2017年に国内でサービスが始まった比較的新しい仕組みです。今後、長期で成長した企業から、一般市場への上場事例が増えるかが注目点です。

M&AのEXIT事例

株式投資型クラウドファンディングはM&Aによる事業売却もEXITのリターン期待値が高い

M&Aは、買い手企業が事業や技術、人材を取り込むために、未上場企業を買収する形のEXITです。

ECF投資家にとっては、IPOほど派手に見えないこともありますが、事業会社との相性が良ければ、比較的現実的なEXITルートのひとつになります。


TrimがM&Aで2.15倍のリターンに

FUNDINNOの投資回収事例では、TrimがM&Aにより5年1か月で2.15倍のリターンとなった事例が掲載されています。

Trimは、授乳室・おむつ交換台検索アプリなど、子育て支援領域のサービスを展開していた企業です。

Next Paradigmが約9か月で2.7倍のリターンに

イークラウドで募集していたNext Paradigmは、投資から約9ヶ月で2.7倍のリターンとなりました。

社名は当初公表されていませんでしたが、上場企業であるセレスの四半期報告書に、全株式を取得し子会社化した旨が掲載されています。

イークラウドにとっても、ECF業界にとっても、M&Aによる分かりやすい成功事例のひとつです。

Innovation Farmが1.1倍~4.4倍のリターンに

FUNDINNOで募集していたInnovation Farmは、あい ホールディングス(東証プライム上場:3076)の子会社となりました。

FUNDINNO公表の投資回収事例では、1.1倍~4.4倍のリターンとなっています。

Innovation Farmは複数回ECFで募集していたため、投資したタイミングによりリターンが異なります。

事業会社・ファンド等による買付のEXIT事例

株式投資型クラウドファンディングは相対取引によるEXITもある

事業会社やファンドによる買付は、IPOやM&Aほど分かりやすいイベントではありませんが、ECF投資家が投資資金を回収する代表的な方法のひとつです。


【事業会社による一部買付】ハーバルアイ(旧:漢方生薬研究所)

ハーバルアイは、医薬品のネット販売を行っている企業です。

  • FUNDINNO案件
  • 2017年12月に募集。出資した投資家は457人
  • 事業会社による一部買付でEXIT
  • FUNDINNO公表の投資回収事例ではリターン1.5倍

FUNDINNO初期の代表的なEXIT事例です。

【事業会社による一部買付】nommoc(無料タクシー)

nommoc(ノモック)は、スマホアプリで配車し、目的地まで無料で乗れるサービスを構想していた企業です。

  • FUNDINNO案件
  • 2018年6月に募集。出資した投資家は254人
  • 事業会社による一部買付でEXIT
  • FUNDINNO公表の投資回収事例ではリターン1.5倍

一部の投資家が買付に応じる形で、投資資金を回収した事例です。

非公開の買付によるEXIT事例

社名非公開の投資回収事例も複数あります。

  • ファンドからの買付:1.2倍
  • ファンドからの買付:1.3倍
  • 自社による買取:1.57倍
  • 自社による買取:1.07倍

社名が公表されない事例もありますが、ECFではIPOやM&A以外にも、買付や買取による投資回収が発生しています。

セカンダリーマーケットで売却

ECFのセカンダリーマーケット「FUNDINNO MARKET」は、株主コミュニティ制度を活用し、未上場株式の売買機会を提供する仕組みです。

対象企業は、FUNDINNOによる審査などを経て取り扱われます。取扱銘柄数や売買状況は変動するため、最新情報はFUNDINNO MARKETで確認する必要があります。

セカンダリーマーケットは、IPOやM&Aを待たずに換金できる可能性がある一方、希望価格で必ず売れるわけではありません。流動性リスクを完全に解消するものではなく、売却機会を増やす仕組みと考えるのがよさそうです。

解散・倒産もある

株式投資型クラウドファンディングは倒産による損失もあり

ここまで投資回収事例を紹介しましたが、ECFはハイリスクな投資です。

出資先企業が計画どおりに成長できず、解散・倒産となることもあります。その場合、投資資金は大きく減る、または戻ってこない可能性があります。


投資回収事例だけを見ると魅力的に見えますが、未回収のまま長期間保有する案件や、解散・倒産となる案件もあります。

ECFでは、1社に大きく投資するより、投資資金を限定し、複数案件に分散する考え方が大切です。

参考までに、スタートアップの撤退事由には下記のようなものがあります。

  • 市場が存在しなかった
  • 資金が枯渇した
  • チームが適切でなかった
  • 競争に負けた
  • 価格と費用の課題
  • プロダクトが顧客に好まれなかった
  • 収益モデルが生み出せなかった
  • マーケティングの機能不全
  • 顧客の声を無視
  • コンセプトが新しすぎた、または古すぎた

STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したかより。

株式投資型クラウドファンディングは、成功すれば大きなリターンを期待できますが、投資先の事業リスクや流動性リスクは上場株より高くなります。

EXIT実績は増えていますが、「成功事例がある=安心して投資できる」ではありません。案件ごとの事業内容、資金使途、株価算定、EXITの現実性を確認してから投資判断を行いましょう。